熱愛発覚中
牛島さんのお父さんと見つめあう状態になってしまったうえに、私の心の中はただただ気まずかった。

私を妻だと本当に信じていることに、我が子と一生を添い遂げる存在だと心の底から信じていることに対して、私はただただ複雑な気持ちを抱いていた。

牛島さんとは期間限定の結婚で、1年後には離婚することを当然のことながら知らない。

「莉理さん?」

名前を呼ばれて我に返った。

「あ、えっと…その…」

考えろ、考えろ、考えろ…。

接客業としての知識を発揮しろ…。

私は牛島さんのお父さんを見つめると、
「私の方こそ不束者ですが…こちらこそ、よろしくお願いします」
と、ペコリと頭を下げた。

…これで大丈夫だろうか?

そう思っていたら、
「本当に蓮司のことを頼みます」

牛島さんのお父さんはそう言ったのだった。

状況を脱出できたことにホッとした反面、私の心の中は複雑なままだった。
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