宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
ダークネイビーのスーツはドレッシーな印象ながら華やかさもあり、その男性のスタイルの良さを際立たせていた。モデルなのかと思うくらい、長身で脚が長い。
彫りの深い顔立ち、スッと通った鼻筋、長いまつ毛に凛々しい眉毛。
一瞬にして目を奪われるくらいの魅力と色気に溢れた男性だと思った。
「こんばんは」
話しかけた理由は特にない。強いて言えば非日常的でムーディーな雰囲気と赤ワインに酔わされたから、としか言い様がない。
とにかく私は笑顔でその男性に声をかけた。
「お隣いいですか?」
「ええ、どうぞ」
その人は近くで見ると、一層端正な顔立ちであることが顕著にわかる。
突然話しかけられて少し面食らっていたように感じたが、私に隣を許してくれた。
「何を飲まれていたんですか?」
「ギムレットです」
「では私も同じものをいただこうかしら」
私も同じギムレットを注文した。
乾杯、とショートグラスをカチンと鳴らす。
「……ギムレットだと、あっという間に終わってしまいますね」
「え?」
「ギムレットはショートカクテルですから」
ショートカクテルとは、比較的短期間で飲み干すことを想定されたカクテルのこと。
「あなたとの時間はあっという間に終わってしまいます」
「長い方がいいということですか?」
「どうでしょう?」