宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜

8.終わりの音



「すまん、結瑠。ただいま」


 家に入ってきたのは宝さん一人だけだった。


「お、お帰りなさい」

「知り合いが急にアポなしで来たから今日は帰ってもらった」

「大丈夫なの……?」

「ああ。それより結瑠、」
「あっ、夕飯もう少しだから先にお風呂どうぞ!もうお湯は溜めてあるので」


 あからさまだったかなと思いつつ、私は話を逸らしてキッチンに戻った。


「……今日はカレーか」

「そうなの。お野菜たっぷりにしたから楽しみにしてね」

「ありがとう。手伝おうか?」

「大丈夫!お風呂先に入って?」

「わかった、ありがとう」


 そう言って宝さんは着替えに行った。
 私はふう、と息を吐く。

 カレーを煮込みながらさっきのことを反芻した。
 インターホンのカメラ越しとはいえ、とても綺麗な女性だったと思う。宝ってとても親しそうに呼んでいた。

 彼女は誰?どんな関係なの?

 すごく聞きたいけど、何となく聞くのが怖い。
 早く会いたいって思ってたのに、あの(ひと)のことが気になってモヤモヤしちゃう。

 それに彼女、なんかどこかで見覚えのあるような気がした。
 確か宝さん、まりんって呼んでいたような――?

 考え事をしていたらカレーでは使わないのに、何故かマンゴーを切っていてハッとした。
 フルーツカレーなんてものもあるけど、まだまだ私にはハードルが高い。もうほとんど調理は終わっているし。


「……デザートでいいか」


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