宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜


 食器を流し台に持っていき、水に浸けておく。
 ダイニングを出てドアを閉めてから、はーーっと大きな溜息を吐いた。

 あからさまに逃げてしまった……。
 本当に私、何やってるんだろう。

 だってはっきり言うけど――、宝さんの顔が真っ直ぐ見られない……!!

 宝さんってあんなにイケメンだったっけ……?
 いやイケメンだった。出会った瞬間からものすごくイケメンだった。

 でも今までは綺麗な顔してるなぁ、くらいだったのに今はまともに顔が見られないというか、ドキドキしちゃうというか……。
 しかもお風呂上がりで髪が濡れているのが、色気を倍増させている。

 思い出すだけで頬が熱くなっていく。


「あーーーー……もう何してんの、私。中学生じゃないんだから……」


 十年越しの初恋からの二度目の恋は、まだまだ私の手に負えない。

 中学生みたいにドギマギしてる気持ちもあれば、あの女性は誰なの?ってモヤモヤする気持ちもある。
 ああもう、本当にめんどくさい。

 宝さんには申し訳ないことをしてしまったという罪悪感もある。

 こんな時優璃だったら、素直な優璃なら真正面から向き合えているんだろうな――。
 ダメだな、私。碧のことがなくても何かと優璃と比べてネガティブになる癖は変わっていない。

 なんで私は恋愛のことになると、素直になれなくて臆病になってしまうのだろう。


「……お風呂入って寝よ」


 何だかこれ以上考えていると、もっとネガティブになって落ち込みそうだ。
 明日も朝早いのは本当だし、今日のところは休もうと思った。

 明日はちゃんと話せるといいな。


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