宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜


「……お疲れ様でした」


 割と早くに退勤できたけど、今日は料理を作る気にはなれない。
 どこかで食べて帰ろうか、それとも何か買って帰ろうかな。

 一人だと適当に済ませればいいや、って思ってしまう。
 料理だって別に好きじゃなかったけど、頑張ろうと思うようになったのは宝さんがいたからなのに。

 ぼんやり歩いて、ふと見上げた。
 ツインタワーが高くそびえている。ホテルからは比較的近いから、より大きく見えた。

 そういえば、まだVIPカードは持っている。これが永続的に使えるものなのかわからないけど、財布に入れっぱなしになっていた。

 何となく足の赴くまま、ツインタワーに向かった。
 高層階へのエレベーターに乗り、VIPカードを見せたらすんなりと入れてくれた。

 まだ入れるんだなぁ、とぼんやり思いながらVIPエリアを歩く。大きなガラスから覗く夜景は、眩い宝石が一面に敷かれているようだった。
 ホリデーシーズンは終わったが、まだまだ冬の寒空をイルミネーションが楽しませてくれる。

 あの日、初めてツインタワーを訪れた時もイルミネーションが美しかった。
 今思えば、なんてロマンチックな出会いだったのだろう。

 ふと、ガラスに映る自分の顔が目に入った。
 何とも疲れた顔をしている。ガラスに映った顔にしても、顔色が悪い。

 あの日はあんなに頑張って背伸びしていたけど、本来の自分はこれなんだ。


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