宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜


「婚約?誰が?」

「だから、宝さんが……海松町真凛さんと」

「え?」


 宝さんはものすごくきょとんとしていた。
 そしてその後、おかしそうに笑い出す。


「俺が真凛と?それはケッサクだな!」

「え、え?違うの?杉石様のお父様がそう聞いたって」

「杉石さんか、相変わらず人の話聞かないなあの人」


 やれやれと肩をすくめた後、そっと私の肩に腕を回す。


「何か誤解させてしまったのならすまない。ちゃんと説明したいんだが、流石に冷えるし帰ろうか。なんか目立ってるようだしな」


 そう言われてここが駅前だったと思い出す。
 道ゆく人たちにジロジロ見られていたことに気づき、急に羞恥心でいっぱいになる。

 人前でイチャつくカップル見る度にTPOを考えなさいよ、って思っていたのにまさか自分がこうなるなんて。


「最悪だわ……」

「俺は別に構わないけどな。触れ回りたいくらいだよ――結瑠は俺のものだって」


 耳元で囁かれ、もっと顔が熱くなる。


「もうっ!宝さん!」

「かわいい」

「〜〜っっ」

「かわいいな、俺の結瑠は」

「やめてってば!」


 マフラーをぐるぐる巻いて顔を隠す。
 そういえば、宝さんの愛情表現は直球すぎるんだった。なんで私はこの宝さんを信じ切れていなかったのだろう。

 それだけ自分に自信がなかったということなのだろうか。

 さりげなく手を繋がれ、私たちは一緒に家路を辿った。


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