宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
誰かに見られていたり聞こえていたりしたらと思うのに、宝さんはニコニコ笑っている。私の反応を楽しんでさえいる。
コツン、と額と額がくっつき、二人の距離がミリ単位で近づく。
ダメ、って言う前に唇を重ねられた。
「ん、ふ……っ」
なぞるように唇を舐められ、真一文字に結んでいても食べられているような感覚に負けて舌の侵入を許してしまう。
「ん、ん……っ」
宝さんのキスは麻薬みたい。頭の中をぼうっとしてとろとろに蕩けさせられ、腰がガクガクしてくる。
「っ、ダメ……っ!」
なけなしの理性で何とか踏みとどまり、宝さんの胸板を押した。
「まだ仕事が残ってるの……!」
「じゃあ続きは帰ってから」
多分全く反省していないであろう宝さんは、私の頬にちゅっとキスをする。
本当に誰かに見られたら困るのに……!
でも本気で怒れないところが我ながらダメだなぁって思う。理性ではダメってわかっていても、本能では宝さんを求めてしまっているから。
「俺は先に帰るよ。夕飯の支度して待ってるから」
「ありがとう……」
「――宝!」
突然宝さんを呼ぶ声がして、思わずビクッとしてしまった。反射的に宝さんから距離を取る。
宝さんを呼んだのは、サーモンピンクのドレスに身を包んだ如何にもセレブな貴婦人だった。恐らく杉石様の結婚式に出席されていた方なのだろう。
「……おばさん」