宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
「もしかして、一般の方……?」
「えっと、そうですね……父は普通のサラリーマンです」
私に対して良くない印象を持たれているなと感じつつ、嘘を言うわけにもいかないので素直に答えた。
「宝、まさか結婚を考えているの……?」
「おばさん、やめてくれ」
「でも……」
「彼女に失礼だって言ってるだろ!結婚なんて、まだわからないよ」
「……!」
宝さんの言葉がチクリと胸に突き刺さる。
「そ、そうよね……ごめんなさい」
気まずい空気が流れた中、おばさまとは別れた。
立ち去る間際、チラッと振り返って私を一瞥した。困ったような表情を浮かべていたのが、はっきりとわかった。
「すまない、結瑠」
おばさまの姿が見えなくなってから、宝さんが頭を下げた。
「嫌な思いをさせた」
「いえ、大丈夫です。私そろそろ仕事に戻りますねっ」
無理矢理笑顔を作り、足早にその場から立ち去った。逃げたみたいになってしまったかもしれない。
――結婚なんてまだわからない。
先程の言葉が棘のように突き刺さる。
宝さんと付き合い始めて以来、結婚の話は一度もされない。
あんなにしつこく求婚していたのに、恋人同士になった途端ピタリと言わなくなっていた。