宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
ちょっとブルーになりながら帰宅したら、すぐに良い匂いが漂ってきていた。
「ただいま」
「おかえり。ちょうどできたところだ」
今夜のメニューはビーフシチューだった。
宝さん、本当に料理の腕前がメキメキ上がっている。最初は一人でワタワタしてたのに、もう一人で数品作れるまでに上達した。
「美味しそう。ありがとう」
「乾杯しよう。やっと一区切りついたな」
一区切りという言葉にドキッとしてしまう。
いや、結婚式が終わったって意味だ。深い意味はない、はず。
宝さんはまた来客用のワインを空けてくれた。
いいのかな、と思ったけどせっかくだからということで甘えることにした。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
カチンとグラスを鳴らして乾杯する。
今日のワインは癖がなく、とても飲みやすくて美味しかった。
「さっきは伯母がすまなかった。どうにも凝り固まった考え方の人で」
「いえ、気にしてないから」
心配かけたくなくて思わず嘘をついてしまう。
「よく言って聞かせるから気にしないでくれ」
「ええ……あの、」
「うん?」
「……ううん、何でもない。このビーフシチュー、とっても美味しい」
「そうか、よかった」
……ダメだ、やっぱり聞けない。
宝さんはもう私と結婚したくないの、だなんて――。
そもそもこんな聞き方したら、私は宝さんと結婚したいみたいだな。