宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
おばさまは何故か納得したように頷いていた。
「宝ったら仕事ばかりで長らく恋人を作っていなかったから、きっと舞い上がっているんだと思うの。でもあの子も二十九だし、そろそろ身を固めるべきでしょう?
実はお見合いの話がいくつかあって、そのどれもが大企業の重役のお嬢さんとかでねぇ。宝は次男だけど、金剛グループに相応しいお家柄のお嬢さんがお嫁にきてくださったら、安泰だし安心できると思うの」
「……」
「ねぇ、白金さんもそう思わないかしら?」
おばさまは柔らかい口調で柔らかい笑みを浮かべながら、私に同意を求めた。
優しげに笑っているけど、目は笑っていない。
こんなに穏やかな口調なのに圧がある。
直接的な言葉は避けているが、はっきりと言っている。
宝さんと別れろ、と。
「あなたホテルでウェディングプランナーをしているんですって?勤め先の社長の身内に手を出したと知られたら、あなたの立場も危うくなるわ。せっかくここまでご立派に働いてくださっているのに、努力が水の泡になったらあんまりよ」
「……」
――わかってる。
私はただの一般人で平社員の一人に過ぎない。宝さんとは全く釣り合っていない。
宝さんにはもっと相応しいひとがいるかもしれない。
わかっているけれど、でも……
「申し訳ございません、宝さんとは別れたくありません」
宝さんと離れることなんてできない。