宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜


 夜のサウスパークは昼間とは全く違う景色を見せてくれる。
 植えられた木々に飾られたイルミネーションの輝きが、道を照らしてくれている。

 この前のサウスパークのデートとは違った雰囲気が楽しめそうで、とても心が躍った。


「ええ、お酒のおかげで体がポカポカしてるしお散歩したい」

「行こうか」


 差し出された右手を取って、ぎゅっと握りしめる。そのまま握った手をコートのポケットの中に入れた。

 手を繋いでコートのポケットに入れるシチュエーションは、密かに憧れていたのでキュンキュンしてしまう。
 冬の夜は吐息が真っ白なのに、心はとても温かい。

 イルミネーションの中を二人で並んで歩いているだけで、ロマンチックだなって思ってしまう。
 言葉を交わすわけではなく、ただ二人で歩くこの時間がとても幸せだった。

 パークから望む海の景色も昼間とは違う。
 イルミネーションの光が水面に反射し、幻想的な風景が二人の空気をより穏やかでロマンチックなものにしてくれる。


「結瑠、本当はさっき話したかったことがあったんだ」

「何?」


 宝さんは立ち止まり、一度手を離した。


「渡したいものがあって」

「渡したいもの?」

「これを」


 そう言って差し出されたものを見て、思わずあっと両手で口を押さえてしまう。
 目の前にあるのは、大粒のダイヤモンドが存在感を放つ指輪だった。プラチナと思われるリングで、イルミネーションの光に照らされてキラキラと輝きを放っている。


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