宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜


 しばらく無言で向かい合った後、急に碧がプッと噴き出した。


「本当に余計な心配だったようだな。結瑠、本当に幸せになれよ」

「あ、うん」

「それじゃあまた後で」


 碧が出て行き、私と宝さんだけが残された。


「妹さんは一緒じゃないのか?」

「さっきまでいたけど、ちょっと席を外していて。碧が迎えに行くと思うわ」

「そうか……」


 何だか宝さん、さっきからずっと不機嫌そう。
 ムッとした表情で碧が出て行ったドアをじとっと見つめている。


「まさか宝さん、嫉妬してる?」

「えっ」

「今日は結婚式なのに?」

「いやそういうわけじゃなくて、ただあいつが結瑠の初恋を奪った男なのかと……」

「嫉妬じゃない」

「……」


 もう、本当にしょうがないんだから。
 クスッと笑って立ち上がり、宝さんの首元に両腕を回す。


「もう終わってるって言ってるでしょ?今は旦那様一筋です」

「それはわかってる」

「宝さんだって初恋の一つや二つ、あるでしょう?」

「俺の初恋は結瑠だ」


 その言葉に思わず体を離して宝さんの顔を見つめる。


「ええっ?冗談でしょ?」

「本当だ」

「だって宝さん、今まで付き合ってたことあったんでしょ?」

「付き合ったことはあるが、本気で好きになったのは結瑠が初めてだ」


 いつも通り、真顔で大真面目に答える宝さん。彼が嘘など吐いていないし、冗談ではないこともわかる。


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