宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜

　どれくらいの時間だったかわからないが、しばらく何度も抱きしめ合い啄むようにお互いの舌を絡ませ合っていた。

　コンコンというノック音が聞こえるまで、ずっと夢中になっていた。


「新郎様、新婦様。そろそろお時間です」

「あっはい！今行きます」


　慌てて離れて鏡を見て、愕然とする。


「やだ！口紅取れてる！」

「俺に付いているな」

「もうやだ！キスしてたってバレバレじゃない！」

「仕方ない。俺の妻があまりにも綺麗すぎて我慢できなかった」

「もう！ばか！」

「怒っていてもかわいいな、結瑠は」


　宝さんは終始楽しそうに笑っていた。
　宝さんの唇に付いた赤い口紅が、さっきまでのキスを思い出してドキドキしてしまう。

　ダメダメ、結婚式が始まるんだから切り替えないと。
　みんな待っているんだから。

　両親はもちろん私の結婚を大いに喜んでくれたし、宝さんのご家族もとても良い方々だった。
　反対されたらどうしようと緊張していたけど、実際にお会いしたらとても優しくて。私たちの結婚を心から祝福してくれた。

　結婚後も私は仕事を続けることになっている。
　ひとまず新居は探さず、今の宝さんの家に二人で住み続けることになっている。家事はこれまで結婚前と変わらず分担、時間が合えば二人で料理をしている。

　私たちの生活は変わらない。
　でもこれからもっと、宝石のようにキラキラと輝く毎日が待っている。

　宝さんとなら幸せで楽しい結婚生活が送れる。そう確信している。


「――結瑠、そろそろ行こう」

「はい」


　最愛の夫の腕を取り、私たちは控室を出た。
　ツインタワーの最上階、私たちの結婚式へと――。



　fin.