宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
最初から話が予定通りに進まないけれど、それでへこたれている場合ではない。
この杉石社長は豪遊好きだとかなり有名らしく、羽振りも良いらしい。娘の結婚式にかける費用も惜しむつもりはないようで、予約が入ってから上条さんに肩を叩かれた。
「期待しているよ」と。
要するにできるだけ派手な挙式にすべしということだ。
一件目から大型案件を任されてしまったな、と思うけどその分やり甲斐もある。何より余計なことを考えなくて済みそうだ。
今は目の前の杉石様と向き合うことに集中した。
「かしこまりました。金剛様にはこちらからお伝え致します」
「お願いします〜。私の婚約指輪も結婚指輪も宝さんがデザインしたものなんですよ〜」
沙耶香様はほくほくしながら左手を見せてくれた。
婚約指輪と結婚指輪を重ね付けしているらしく、ダイヤモンドの輝きが彼女の幸せを象徴している。
婚約指輪には大振りのダイヤ、結婚指輪にはさりげなくダイヤが埋め込まれており、シンプルながら重ねることで唯一無二のデザインとなっているようだ。
純粋にすごいデザインだな、と思った。
「とても素敵ですね。指輪を二つ付けてこそのデザインなんですね」
「そうなの!彼が選んでくれたんです!」
隼人様は特に何も言わなかったが、嬉しそうな沙耶香様を見て優しく微笑んでいた。
生粋のお嬢様と真面目そうな青年、意外にもお似合いの夫婦のようだ。