宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
金剛さんは食い下がろうとしたが、ここは絶対に譲るわけにはいかない。
こんなの申し訳なくて逆に居心地が悪い。
「自分の部屋は自分で掃除します。洗濯機は使わせていただきますが、アイロンがけは自分でしますので」
「……」
すると金剛さんは少し考えてからこう尋ねた。
「結瑠は家事が好きなのか?」
「どちらかと言えば嫌いです」
「なら別にしなくていい。同じ家の中なんだしまとめてやった方が楽だろう」
「私の気持ちの問題です。何でも与えてもらってばかりでは気持ちが悪いんです。今の生活は金剛さんのものですから、私がそこに乗っかるわけにはいきません」
私たちは婚約しているわけではない。
婚前同居などと言っているけど、実際はあくまで結婚相手として相応しいのかどうかお互いに見定める段階だと思っている。
いくら私に結婚願望がなくても、この同居を決めたからには少なくともその条件は飲んだつもりだ。
だけど、結局付き合っているわけでもないし、今はまだ他人同士が一つ屋根の下にいるだけ。
全くもっておかしな状況だけれど、これが事実なのだ。
赤の他人の生活に土足で踏み込むような真似はできないし、したくもない。