宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
ワイングラスを軽く揺らしながら、結瑠は憂いを帯びた表情になる。
この夕食の時間だけで今まで見たことない表情がいくつも見られて、その度にドキッとする。
「わたし、双子の妹がいるんれす〜」
「ほう、そうなのか」
「この前結婚したばかりで、今シンガポールにいるんれすよ〜」
そう言って結瑠は写真を見せてきた。マーライオンの前で男女が仲睦まじく笑っている。
女性の方は雰囲気は違うが、結瑠とよく似ている。隣に映っているのは彼女の旦那だろうか。
「良い写真だな」
「でしょ〜?幸せそうでわたしも嬉しいはずなんれす。……でも、まだダメで」
「ダメとは?」
「妹の旦那のこと……ずっとすきだったの」
「……!」
結瑠は一口ワインを飲んでから続ける。
「彼は幼馴染で、子どもの頃からよく知ってて。中三のバレンタインに告白しようとしたら、見ちゃったの。妹も彼に告白してて、それに応えてたところ」
「……」
俺はただ黙って結瑠の話を聞いていた。
「薄々そうなのかな?って思ってたから、抜け駆けだとかは思わなかった。でも、彼は…碧は私じゃなく妹を選んだんだって。
顔は同じでも、碧が好きなのは私じゃなく妹だった……」