宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
ゆっくりと唇をなぞるように喰まれ、離れたと思ったら角度を変えてもう一度。
あの夜、何度キスしたかわからないくらいしたのに、まだ右往左往する彼の唇と舌に翻弄される。
でもあの夜のような激しく貪るようなキスじゃなく、なめらかで優しくじんわりと味わうようなキスだった。
だけど頭がぼうっとなって、全身がふわふわして何も考えられなくなる感覚はあの時と同じ。
「……っ、はぁ……っ」
唇が離れたと同時に、息が漏れ出て透明な糸がだらりと垂れ下がった。
「……っ!なんで止めないんだ」
「え?」
離されたと思ったら、目の前には少し赤らんでムッとしている宝さんの顔が至近距離にある。
まだ上手く息を整えられていない私は上手く言葉を発せない。
「結瑠が拒まないと止められなくなる……」
「……!」
「これでも必死に我慢してるんだ。結瑠の嫌がることはしたくないのに、いつも結瑠に誘惑される」
「ゆ、誘惑なんてしてないっ!」
「でも俺は誘惑されてるんだよ」
宝さんは私の額にちゅっと軽いキスを落としてから離れ、ハンドルを握り直した。
エンジン音とともに車が発車する。
――いや誘惑してるのはどっち!?
もう体中が熱くて暖房の暖気が暑いくらいに感じた。
私は心臓がバクバクして破裂しそうなのに、宝さんはいつもの真顔に戻って運転に集中している。