宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
隼人様は口数少なく、一緒にいても頷いて聞くばかりで自分の意見は言わない。
でも、沙耶香様を想う気持ちは見ていて感じ取っていた。
沙耶香様を見つめる瞳はいつも優しく、愛おしそうに感じていたのに。
私はウェディングプランナーとして数々のカップルを見てきたからこそ、わかる。
とにかく沙耶香様のことは何とか宥めて、一旦はお帰りいただき落ち着いてから改めて話をすることにした。
ひと段落着いてお昼を食べようかという時、また電話が鳴る。宝さんからだった。
「もしもし」
『白金さん、今いいかな?』
白金さんと呼ばれたということは仕事モードだ。
「はい、大丈夫です」
『杉石さんのことだけど、大丈夫か?』
「大丈夫かはわかりません……どうやら新郎様が別れたがっているようで。金剛さん、隼人様のこと何かご存知ないですか?」
『いや全く。会ったのも一回だけなんだ。指輪を買いに来た時だけで』
「そうですか」
せっかく宝さんに素敵なティアラを作ってもらっているところなのに、このままキャンセルだなんてもったいない。
沙耶香様のあんな姿を見てしまっては、放っておけないし何とか隼人様ともお話できたらと思った。
でも連絡先聞いてるの沙耶香様だけだから、アポイントを取る方法がない。
『俺も何かあれば連絡する。ひとまずティアラのことは気にしなくていい』
「金剛さん、ありがとうございます」
『それじゃあ、また』
結婚式がキャンセルになればティアラも当然キャンセルになる。私が気にしていると思って、わざわざ電話してくれたのだろうか。
優しいな……。
宝さんの心遣いに胸がきゅうっとなる。
「――よし!私も頑張らないと!」
私は気合いを入れ直し、自分自身を奮い立たせた。