宝石みたいな婚前同居〜一夜限りのはずが強引御曹司に迫られています〜
お会いしたいと思っていたところに本人がいらしてくれてよかった。宝さんまで一緒だとは思わなかったけど。
「こちら、ダージリンティーになります。金剛さんはコーヒーでよろしかったですか」
「ああ、ありがとう」
「どうぞ」
宝さんにはコーヒー、隼人様にはダージリンをお出しすると隼人様が少し戸惑ったように尋ねた。
「どうして僕がダージリンが好きだとわかったんですか?」
「沙耶香様が仰っていたんです。紅茶はダージリンがお好きだと」
「そうですか……」
「あの、失礼ですがどうして結婚を辞めてしまわれるんですか?」
「……僕では彼女に相応しくないからです」
隼人様は肩を落として項垂れていた。
「僕は杉石不動産に勤める普通の平社員です。別に優秀なわけでもないし、出世もしてません。だから社長令嬢を落として成り上がろうとしてるって陰口叩かれていて……。
僕が悪く言われるのは構いませんが、沙耶香さんの評判まで落ちてしまうと思うと耐えられなくて」
何となくそうなんじゃないかとは思っていたけど、やっぱり沙耶香様のためだったんだ。
「沙耶香さんは僕にはもったいない素敵な女性です。天真爛漫で可愛らしくて真っ直ぐで、社長令嬢という肩書きに甘えず真面目な努力家です。それなのに僕のせいで沙耶香さんが……」
「そんなに彼女を大切に思っているのに手離すんですか?」