私が一番近かったのに…

プロローグ

いつからだろうか。自分の気持ちを伝えなくても気持ちが通じ合える…——。
…なんていう、激しい勘違いをしていたのは…。
そんなことは絶対にあり得ない。自分の気持ちは言葉にしないと相手に伝わらないし、絶対に相手も同じ気持ちとは限らない。

私は恋愛経験が豊富な方ではない。寧ろこの恋が初恋である。
十九歳ともなれば、告白されたことならあるが、片手で数えるほどしかない。
その時は、告白された相手のことを好きになれず、毎回お断りしていた。
中には学校一カッコイイ先輩からの告白もあったりしたが、結局、好きにはなれなかった。
皆から勿体ないというブーイングの嵐をもらったが、自分には合わないと思えばそれまでだ。

自分から好きになったことなど、まだ一度もなかった。
だから、まさかこんなに呆気なく散ることになるなんて思いもしなかった。
周りから羨まれるぐらい、私達は本物に近かいと、勝手に思い上がって、彼ならいつか私の元に飛び込んできてくれる。そう信じていたのに…。
それなのに、彼からもらった一言は…、

『俺さ、あの子に告白されたんだ。
幸奈、俺、あの子と付き合おうと思う』

そのたった一言で、この恋が終わるのは嫌だった。
だから、私は諦めない道を選択した。きっと今にして思えば、失恋したという事実を受け入れられなかったのかもしれない。
だって、私は知ってはいけない彼の本当の想いに触れてしまい、余計に諦めがつかなくなってしまったから。
もう引き返すことはできない。やり直す方法も知らない。今更、ただの友達になんて戻れない。
彼の傍を手に入れるためならば、なんだってすると決めた。

これは、私が彼に振り向いてもらうまでのお話です。
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