私が一番近かったのに…
それに旅行中は、彼女への罪悪感や後ろめたさを感じずに、過ごすことができる。
つまりこの旅行は、私が心から楽しんで過ごすことができるというわけである。

「私も凄く楽しみ」

誰もいない昼下がり。気が大きくなっていた私は、大胆な行動に出た。
誰が見ているかなんて分からないというのに、全く躊躇することなく、愁の腕に自分の腕を絡め、思いっきり胸を押し当てた。
こんなところを彼女に見られでもしたら、修羅場になるかもしれない。そしたら、彼女と別れるのかな…?

「おい。絡めるのはいいが、胸をわざと押し当てるのは止めろ」

「なんで?別にいいでしょ?いつもしてることじゃん」

完全なる挑発だ。愁がどんな反応を示すのか、試してみたくなった。
いくら旅行を承諾してくれたとはいえ、こんな明るい時間に、自宅付近の道すがらで、セフレに腕を絡められるのは、さすがに優しい愁であっても、気分を害したと思う。
そう思われても、仕方ないよね。そろそろ腕を離さないと…。
離そうとした瞬間、空いている方の手で、離そうとした私の腕を思いっきり掴まれた。

「離すなよ。その、いきなり胸が当たったから、びっくりしただけだ。
お前の胸は凄く柔らかくて、当たると触りたくなる胸というか、お前の胸に興奮したら、旅行の予約とか、それどころじゃなくなるから。なるべく当てないようにしてくれると助かる…」

顔を真っ赤にさせながら、必死に弁解された。相当、恥ずかしかったのであろう。
その気にさせるつもりなんてなかった。ただ、腕を絡めたかっただけだ。
嬉しさを表現したかっただけだというのに、私は胸を押し当てるという、余計なことをしてしまった。

「ごめんね。なるべく当てないように気をつけるから」

愁を困らせてしまうのなら、意味もなく腕を絡めたりするのは、止めた方がいいのかもしれない。
困っている愁を見るのも楽しい。好きな人が自分のことで慌てふためいてくれる姿は嬉しいから。
でも、それと同時に、困らせたくないという気持ちもある。
負担をかけたくない。もっと都合の良い女を演じなきゃ…。

「気にすんな。その、よかったぜ。お前の胸、柔らかくて、気持ちよかったから」
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