私が一番近かったのに…
「そんなに不安そうな顔をするな。幸奈が嫌ならしないから」

そういう問題ではない。万が一のこともある。
いざ、そうなってしまった時に、愁はちゃんと責任を取ってくれるのだろうか。
彼女と別れてくれるかどうかさえも怪しい。

「もしかして、勢いだけでこういうことしたことあるでしょ?」

「あるよ。先週、彼女と」

最低な男だ。もはや、女の敵でしかない。せめて、最低限のマナーは守って欲しいと思う。
もっと彼女のことを、大切にできないのかな?あんなに可愛い彼女なのに…。
彼女の立場になって考えてみたら、胸が痛んだ。
愁は胸が痛くならないのかな?あまりの酷い仕打ちに、愁の人間性を疑ってしまった。

「ダメでしょ?ちゃんとしなきゃ。
どうせ、他にも隠してることがあるんでしょ?隠してることを全部、洗いざらい話してくれたら、今だけは特別に許してあげる」

きっと常習犯に違いない。絶対、他にも隠していることがあるはず。
それならば今、全てを包み隠さずに話してほしい。
上手く受け止められるかどうかなんて、分からない。
それでも、私だけが愁の悪い部分を知っておきたかった。

「高校の時、歳上の彼女と。
あと、一回だけノリで、付き合ってもない子としたことがある」

純情で優しいと思っていたのに。
やっぱり手慣れていると感じたのは、経験豊富だったみたいだ。

「ノリ…って?それはどんなノリなの?」

「それは…女の子に誘われて。断りきれなくて」
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