私が一番近かったのに…
「分かった。絶対に約束は守ってね」

「あぁ。約束は絶対に守る」

旅行で浮かれていたせいで、すっかり自分の立場を忘れそうになっていた。
そして同時に彼女でさえも、同じような扱いを受けているという事実を、知りたくもなかった。
愁はきっと女の子が大好きだから、女の子であれば、誰にでも優しくする。
同時にそれは、女の子であれば誰でもいいという意味でもある。

もう愁に多くは望まないことにする。だって、それが叶わない願いだと知ってしまったから。
身体から手に入れれば、心も落ちるかもしれないと、甘く考えていた。
しかし、心から手に入れたとしても、きっと同じ結果にしかならなかったのかもしれない。
なら、飽きられてしまわないように、ただひたすら努力するのみだ。
今日みたいな展開は正直、もう懲り懲りだ。

「だからごめん。手だけ貸して…」

やっぱり、そういう流れになってしまうよね。
ここは仕方ない。私が手を貸せば、この状況も早く解決することができる。
とりあえず、ここは丸く収めるために、手を貸すことにした。
こんなことさっさと終わらせて、旅行の予約をしに行かなくては。

「いいよ」

私はこういった行為に利用されるだけの相手でしかなかったということを、改めて思い知った。
突きつけられた現実に、更に私の胸が締めつけられた。

「ありがとう。助かる。それじゃ早速…」

私の手を掴み、あとは愁のやりたいように使われた。
その間、ずっと私の心は痛かった。早く終わらないかな…なんてことを、心の中で思った。
< 105 / 346 >

この作品をシェア

pagetop