私が一番近かったのに…


           ◇


予約はすんなり行えた。あとは当日を迎えるのみ。
あの日はあの後、愁は私を抱かなかった。罪悪感からか、旅行の予約を終えた帰り道、いつも通り私の家に来ても、同じ布団で寝るだけで終わった。
普通のカップルみたいにイチャイチャして、甘い時間を過ごした。まるで自分が彼女だと錯覚するかのように…。

なんて、そんなことは決してなく、次の日、目を覚ませば、愁は身支度を整えていた。もう家を出て行ってしまうのだと察した。
待って…って言えなかった。喉まで出かけて、思い止まった。
言ってしまえば、この関係が終わってしまうという恐怖から、毎回口に出せずにいた。
素直に言ってしまえばいいのに。そんなのとっくに分かっていた。どうしてこんなにも素直になれないのだろう。

この関係がいつまで続くのだろうという不安で、胸が押し潰されそうになる。
いつまでも続くはずがない。今だけの関係に過ぎない。
いつしかこの気持ちも薄れて、ただの友達に戻れるかもしれない。
愁のように割り切れたら、どんなに楽だったのだろうか。
今日も上手く割り切れないまま、アルバイトへと向かった。

「え?愁、今日はお休みなの?」

旅行の休みを取る時、この関係がバレないようにするために、それぞれ別の理由で休みを入れた。
私は友達と冬休み旅行。愁は実家へ帰省。
ちなみに愁は、クリスマスも休みをちゃんともらっていた。
クリスマスに関しては公認の仲なため、簡単に休みが取れた。
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