私が一番近かったのに…
クリスマスも旅行も休むとなると、それ以外では極力休まないようにしようと、二人の間で決めていた。
それなのに、どうして休んだのだろうか。愁とようやく本当の意味で、二人っきりになれるチャンスだというのに。
もし、旅行に行けなくなったりでもしたら、どうするつもりなのだろうか。

「どうやら風邪引いたみたいだぞ。この前、咳き込んでたしな。
ったく、この忙しい時期に、風邪引きやかって」

私達が旅行へ行くのは年末。年越しを一緒に過ごすこととなっている。
ってきり年越しぐらいは、彼女と過ごすものだとばかり思っていた。
しかし、愁から返ってきた言葉は、

『彼女は高校生だから、夜遅いのは親が厳しいみたいなんだよ。
それにもう、大学の友達と過ごすってことにしておいたし』

…なんてことを言っていた。浮気なんて気にもしない、あまりの堂々ぶりにこちらが拍子抜けするほどであった。
あっちもこっちもなんて忙しい日々を過ごしていれば、体調も崩すはずだ。
愁の身体が心配だな。あとで軽く連絡でも入れておこう。行けたらお見舞いにも行こうかな。

「とりあえず大平さん、岩城くんの分も頑張ってね」

愁がいない分、私は仕事を頑張った。たかがアルバイト…なんて思う人もいるかもしれない。
しかし、たかがアルバイトとはいえども、賃金を頂いているわけだから、ちゃんと責任はある。
愁が空けた穴は他の人で埋める。同僚として。友達として。
ただ愁がいないだけなのに、ぽっかり穴が空いたみたいに寂しかった。

「大平さん、こっちに入って」

てんやわんやで忙しかった。休憩などないに等しかった。
ようやく仕事を終え、落ち着いたところで連絡を入れるため、携帯を開いた。
ふと何気なく時刻を確認すると、もう夜も遅い時間だった。
あまりにも忙しかったので、遅くなってしまったみたいだ。
こんな時間にお邪魔するのは、却って失礼だ。
お見舞いは諦めて、連絡だけ入れてみることにした。

“体調は大丈夫??”

これからどんどん忙しくなっていく。同僚としても仕事場には出てほしい。人手不足は過酷だから。
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