私が一番近かったのに…
そうこうしているうちに、すぐに返信が返ってきた。内容はこう書かれていた。

“朝から頭痛と鼻水が酷くて。それに少し熱もあったから、病院に行ってみたら風邪だった。
今は薬をもらってきたから、少し楽になった。
幸奈、心配してくれてありがとう”

体調は良くなっているみたいで安心した。愁の体調が悪いと、私の気持ちまで暗くなってしまう。
勿論、心配な気持ちもあるが、何より一番辛いことは、愁に会えないことだ。
愁と一緒に居られる時間は、一分一秒でも無駄にできない。早く元気になってほしい。愁に会いたい。

“よかった。体調が少しでも良くなってるみたいで。
でも、安静にして、ゆっくり休んでください”

いつも愁が隣に居るのが当たり前な帰り道。一人で歩く夜道は、とても寂しく感じた。
本当は中山くんがご厚意で、愁の代わりに送ってくれようとしたが、私はそれを断った。
なんだかまだ中山くんとは気まずいままなので、極力、二人きりになるのを避けたかった。
中山くんは優しくていい人だ。もしかしら、まだ罪悪感を感じているかもしれない。
それでも、気にしていないフリまでしてくれている。そうでもしないと、いつまでも私が気にしてしまうからである。

仕事上で関わる分には問題ない。お互いにあの話を避けることができるから。
しかし、いざ仕事以外で中山くんと二人になると、自然と話の流れが愁のことになってしまう。
中山くんは絶対に謝りたいと思っているに違いない。
もし、中山くんが謝罪する流れになったら、空気が悪くなることは目に見えていた。
中山くんは何も悪くないのに、これ以上気まずいままでいるのも長引かせたくない。
私の心の中は、愁を軸に色々な感情が渦巻いていた。
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