私が一番近かったのに…
暗い夜道を一人で歩いている最中、携帯が鳴り、一瞬、身体がビクッとなった。
携帯を開くと、愁からの返信だった。内容は、

“幸奈に早く会いたい”

…だった。最初は彼女と間違えたのかな?なんて思った。
でもよく見たら、“幸奈”って文字がちゃんとあった。
私も会いたい。愁に会えないだけで苦しい。愁の言葉に心が熱くなった。

“私も。でも私の方がもっと気持ちが強いと思う”

遠回しに早く彼女と別れてほしいという嫌味を込めた。
こんな関係になって、図々しいことを言っていると分かっている。
それでも、気持ちを止めることはできなかった。
そんなことを考えていたら、また携帯が鳴った。
返信を見るのが怖いけど、緊張しながらメールを開いた。

“会いたい気持ちに勝ち負けなんてない。
気持ちが同じなら、どちらの気持ちも負けないぐらい会いたいって証拠だと、俺はそう思う”

皮肉を気づいてもらえなかった。それともわざと気づいていないふりをされた可能性もある。
どうして、こんなにも気持ちに距離があるのだろうか。
もう気持ちを我慢することなんてできない。セフレのままじゃいられない。
こんな気持ちのままじゃ、私はもう愁の傍にはいられない。
今回の旅行で、この関係を終わらせよう。そしてアルバイトも辞めて、新しい働き先を見つけよう。

このままではどんどん惨めになっていく。自分のことを嫌いになりそうだ。
それに愁を好きな気持ち。この気持ちさえも嫌になってしまいそうで怖い。
だから、愁の傍を離れて、時間をかけて忘れることに決めた。

そのためにはまず、勇気を出して行動に出なければならない。今から心の準備をしておこうと思う。
その後は返信せずに家に着き、そのまま疲れて寝てしまい、気がついたら朝を迎えていた…。
< 110 / 346 >

この作品をシェア

pagetop