私が一番近かったのに…
とりあえず、話題を変えてみることにした。

「本当だよ。それにしても愁、昨晩は激しかったね。最近、彼女とはしてないの?」

「してないよ。旅行に行くまで禁欲するつもりでいたから」

それって、私としかしていないってこと?!
だとしたら、愁は数ヶ月近く我慢していたということになる。
その間、彼女ともちゃんと会っていたのにも関わらず、ここまで私との旅行に賭ける愁が不思議で仕方なかった。

「それはどうして?」

「最近、彼女がこういうことしようとすると、嫌がるんだ。
ゴムを付けてしなかったことがあるからかもしれないな」

それはそうだ。もし、自分が同じことをされたら、許せないと思う。
彼女の立場になって考えてみたら、当然の話だ。
全く、男の人は。妊娠するかもしれないというリスクを、少しは考えてほしいものだ。
本能の赴くままに行動する愁に対して、私は少し呆れていた。
そもそも、愁がちゃんとゴムを付ければいいだけの話だと思う。

「絶対にそれが原因だと思う。彼女にはちゃんと謝ったの?」

「一応、その日中にちゃんと謝った。その時はその場の空気を壊さないために、彼女は一応、許してくれたんだけど。
後日、コテンパンに叱られた。そりゃそうだよな。妊娠したらって思うと怖いよな…って、思い知らされた」

妊娠…。今の私達にはまだ重くのしかかる言葉だった。

「そうだよ。だってまだ彼女は高校生でしょ?もっと大切にしてあげなきゃ」

「あぁ。分かってる。だから一切、手を出していない。キスすらしていない」

キスも?それは大切にしすぎなのでは?
たった一度の誤ちが、そこまで冷めきった関係になるものだろうか。
私には到底、理解できない。彼女さんの気持ちも。愁の気持ちも。
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