私が一番近かったのに…
「キスも?随分、大切にしてあげてるんだね」

「キスしたら最後までしたくなっちゃうから、手を出さないって決めたんだ。彼女のこと、大切にしたいから」

それじゃ、私のことは?セフレだから、何をしたっていいってことなの?

「そっか。愁は優しいんだね」

「今の話を聞いた上で、お前は俺のことを優しいって思うんだな」

正直なことを言えば、優しいとは思えない。
だけど、彼女に対する想いだけは、愛情を少し感じた。

「なんだかんだ彼女のことを大切にしてるんだなって思ったよ」

「そういうことか。幸奈って本当に面白いよな。
だから、一緒に居て飽きないんだよな」

面白い?一緒に居て飽きない?
だったら、私でいいじゃん。私だったら、愁のために何でもするのに…。
所詮、私はまだ友達以下に過ぎないという現実を思い知った。

「そんなに面白いかな?まだ何も面白いことなんてしてないよ?」

「これからするつもりなのか?
まぁ、それはさておき、俺にとって面白いって意味は、一緒に居て飽きない存在ってこと。
そんな幸奈と、俺はもっと一緒に居たいって思ってる」

好きな人に面白いと言われるのは複雑だ。可愛いや綺麗とか、そういった言葉を言われてみたい。
それでも、一緒に居て楽しいと思ってもらえるのは、心から素直に嬉しい。
だって、好きな人にもっと一緒に居たいって言われたから。

「そっか。褒め言葉として受け取っておくよ。
一緒に居て、面白いと思ってもらえてるなら…ね?」

この距離感がもどかしい。手を伸ばせば、いつでもあなたは傍に居るのに、でもあなたは一番遠い人。
面白いだけじゃなく、好きだと思ってもらえるようになりたいと、密かに心の中で願った。
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