私が一番近かったのに…

5章:秘密

とうとう明日は待ちに待った旅行…。
荷物の最終チェックはした。大丈夫。忘れ物はないはず。
クリスマスの時は、私が気絶したせいで、ホテルの退室時間がギリギリになってしまい、もう一回することはできなかった。
時間もなかったため、軽くシャワーを浴び、すぐさま着替えを済ませてホテルを後にし、それぞれの家へと帰宅した。

暫くの間は、バイト終わりの帰り道を一緒に帰るだけ…か。
ちょっぴり寂しいかも…。旅行までお預けか。
あんなに刺激的な夜は、もう二度とないかもしれない。
もしかしたら、寂しさのあまり、物足りないと身体が悶え、疼き出すかもしれない。
いつもならここで寂しさのあまり、涙が溢れ出そうになる。
でも、あの日は違った。先に背を向けて歩き出したはずの愁が、私を追いかけてきてくれた。

「幸奈、俺があげたプレゼント、絶対付けてくれよ。
バイト先にも旅行にも。それじゃ、またな」

もちろん、もらったプレゼントは使わせてもらうし、大事にする。
でも、わざわざそれだけのために、言いに来るのが、気がかりで仕方なかった。
そして、次の日には、何事もなかったかのような顔をしていた。
あれは一体何だったのだろうか。気まぐれだったのかな。
ダメだ。上手く状況を整理できない。
ここは一旦、考えるのを止めよう。きっと深い意味なんてないはずだから。

それから旅行に行くまでの間、ずっとバイトに打ち込んだ。いつもと何も変わらない日々を過ごしていた。
そして、バイト終わりの帰り道も、いつも通り家の前まで送ってくれた。
そんな当たり前の日常も、あっという間に過ぎていき、明日からはいよいよ愁と初めての旅行だ。
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