私が一番近かったのに…
「そうだね。私には愁が付いてるもんね。ありがとう。心配してくれて」

愁の肩の上に、ちょこんと頭を乗せてみた。自分的には結構、大胆な行動に出た方だ。
もしかしたら愁は、肩が重くなるから止めてほしいと、思っているかもしれない。
でもこの旅行中は、そんなことは一々気にしないことにした。
だって、この旅行を楽しむって決めたから。
それに、今だけは彼女の存在を気にせずにいられるから、肩にもたれかかるくらい序の口だ。
こんな時間が永遠に続けばいいのにと、願わずにはいられなかった。

「幸奈。今、香水つけてる?」

「え?つけてないよ?臭う?」

「いや、すごく良い匂いがしたから。違うならいいんだ」

最近、シャンプーとボディクリームと柔軟剤を変えた。
もしかしたら、そのどれかが良い匂いなのかもしれない。

「最近、柔軟剤とシャンプーとボディクリームを変えたばっかりだから、その中のどれかの匂いだと思う」

「そうなのか。…んー、この匂いは、シャンプーの匂いだ」

どうやら良い匂いの正体は、シャンプーだったみたいだ。
シャンプーを変えてよかった。愁に良い匂いと言ってもらえたから。

「実は今日ね、この匂いがするシャンプーを持ってきたんだ。
夜、お風呂に入る時に使うと思うから、もっと良い匂いがすると思う」

何を言ってるんだ、私は。自分でも不思議なくらい、積極的にアピールしている。
私って、こんなに大胆だったっけ?もう少し控えめだったよね?
今からでも、愁を振り向かせることってできるのかな?できたらいいなと思った。
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