私が一番近かったのに…
最初は軽く食べ物や飲み物をつまんだりしていたが、すぐにまた眠気が襲ってきたため、二人してそのまま眠りに落ちた。
気がついたら、あっという間に京都に着いていた。

「着いた…!」

ようやくバスの中から解放された。
何時間も密室に閉じ込められていたせいか、外の空気がより美味しく感じた。

「京都へ来たって感じがするな」

ちなみにバスツアーで各所へ巡るのもあったが、私達はそれには乗らず、普通の高速バスにした。
さて。ここからが本番だ。まずはどこから回ろうかな…。

「まずは泊まるホテルに行って、チェックインして、荷物を置いてくればいいんだよね?」

「あぁ。まずはホテルだな」

バスの中に長時間座っていたせいか、少し身体が疲れた。
早く荷物を手放して、自由になりたい。
それに今からお土産も買ったりするので、なるべく荷物は減らしておきたい。

「幸奈、こっち」

気づけば、自然と手を繋いでいた。
なんだか愁も楽しそうだ。早く色んな場所を巡りたい。
京都に来てよかったと、心からそう思えた。
こんなに楽しい時間はない。胸が踊る。いつもこんなふうに楽しめたらいいのに…。
なんてことを考えながら、ホテルへと向かった。


           ◇


ホテルに向かうまでの間、愁がスマホのマップアプリを使いながら、道案内してくれたお陰で、無事に迷うことなく、ホテルに辿り着いた。

「いらっしゃいませ」

受付のお姉さんがこちらに気づき、会釈してくれた。こちらも少し頭を下げた。

「本日、予約した者なんですが…」

「ありがとうございます。お名前をお窺いしてもよろしいでしょうか?」

「岩城です」

「岩城様ですね。ご確認させて頂きますので、少々お待ちください」
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