私が一番近かったのに…
「それじゃ、お言葉に甘えて。お先に入らせてもらうね」

愁の考えてることがよく分からないよ…。
脱衣場で項垂れながら服を脱ぐ。
もしかして、もう私では興奮しないとか?
いやいやいや!だとしたら昼間、私をからかう必要がない。

「はぁ…」

溜息をつきながら、脱いだ服を綺麗に畳む。
裸になると、心までもが丸裸になってしまうような感覚に陥る。
一緒に入ろ?と素直に甘えればよかった。一人になると、途端に寂しくなってきた。
項垂れたままでも仕方がないので、気持ちを切り替え、シャワールームの扉を開けた。

「…綺麗」

さすがホテルのお風呂。お部屋に付いてるお風呂といえども広い。
しかも、掃除もちゃんとされており、綺麗な状態を保っている。
それだけではなく、女性が喜びそうなオシャレなシャワールーム。
自宅のお風呂とは大違いだ。いや、寧ろ比べること自体が失礼に値するほど、豪華なお風呂だ。
想定外なほど、お洒落なバスルーム。これじゃ、シャワーを浴びるのでさえも、恐れ多く感じてしまう。

そんな空間にいるせいか、いつもの倍はチェックを怠れない。
匂いやムダ毛のチェックは勿論、肌と髪のケアにまで、目が行き届く。
メイクは先に落としておこう。きっと今からたくさん汗をかくと思うから。
それにあまりの気持ちよさに、疲れてそのまま眠ってしまう可能性が高い。
それならば、最初からメイクを落としておくのが得策だ。
なんて、言い訳をたくさん並べてみたところで、一番の理由はメイクをしたまま、眠るのが嫌なだけであった。
< 139 / 346 >

この作品をシェア

pagetop