私が一番近かったのに…
全てを綺麗に洗い流し、湯船に浸かる。
緊張しているせいか、気持ちが焦り出し、ゆっくりと浸かることはできなかった。
慌ててシャワールームを後にし、脱衣場に置かれていたドライヤーを手に取り、ベッドルームにあるドレッサーの前で髪を乾かすことにした。

「お風呂、お先に頂きました」

勝手にぎこちなくなってしまう。
あれ?どうやら、愁も緊張している様子。
もしかして、いつもと様子が違ったのって、緊張しているせいだったのかな?

「あ、あぁ。俺も今から入ってくる」

愁がシャワールームへ向かったのと同時に、ドライヤーで髪を乾かし始めた。
気のせいだろうか。いつもより乾きが早く感じる。
いや、寧ろ髪を乾かすことに、意識が集中できていない。
愁がお風呂から出てきたら、本番開始の合図…。
バスローブの下には、一応下着を着けている。この日のために、可愛いのを用意した。
着けるか着けまいか、ギリギリまで迷った。
もし、愁だったら、脱がせたいだろうなと思い、下着を着けることにした。
それにいくらやる気満々であっても、下着を着けないという勇気までは持てなかった。
せめて今日のために選んだこの下着で、やる気をアピールしたいと思った。
気がついたら、髪を乾かす手が止まっていた。
ドライヤーを片付ける気持ちもなく、ドレッサーの上に適当に置いた。

「幸奈、お待たせ」

声がする方へ振り向くと、上半身裸でパンツのみ履いている愁がいた。
濡れた髪がセクシーで。今まで意識してなかったことに、ドキドキさせられた。

「おかえりなさい」

今までの中で、一番緊張しているかもしれない。

「幸奈はここのバスローブを着たんだな」

「うん。着てみた。変?」

「変じゃない。可愛い」

愁に手招きされた。ベッドの上に腰掛ける愁の元へと駆け寄った。

「今から脱がせるから、関係ねーんだけどな」

近づく私の腕を掴み、ベッドの上に組み敷かれた。
そのまま深いキスを落とされ、私は簡単に逆らえなくなってしまった。
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