私が一番近かったのに…
「おい。幸奈、起きろ。もう朝だぞ。って言ってももう昼過ぎだが…」

寝ぼけ眼で、身体を起き上がらせた。
眠りに落ちる前にシャワーを浴びたが、あまりの眠さに服を着ずに、そのまま眠ってしまったみたいだ。
服を着て寝ればよかったと、急に恥ずかしさが込み上げてきた。

「おはよう。身体、大丈夫?」

上手く顔が見れない。布団で身体を隠し、俯きながら、愁の問いに答えた。

「うん。大丈夫だよ。愁は大丈夫?」

「うん。俺も大丈夫」

心配してくれる愁に、朝からときめいてしまう。
これはただの優しさ。そんなのはとっくに分かっている。
それでもこの胸は、ドキドキしてしまうのであった。

「それならよかった」

「幸奈、早く着替えろ。出かけるぞ」

自分のことで精一杯で、気づいていなかったが、愁はとっくに着替え終わってるみたいだ。
私が寝ている間に着替えたみたいだ。私が起きないように、そっと静かに…。
愁の優しさは、私をときめかせる材料だ。その優しさが、嬉しくもあり、時に辛くもあるが…。

「はーい!待ってて。すぐ終わらせるから」

とは言いつつも、着替えだけで終わるわけがない。女性の支度は、どうしても時間がかかってしまう。
どんなに早くても、必要最低限のことはしておきたい。
あまり待たせるわけにはいかないので、早く支度を済ませようと思う。

服は旅行前に購入したニットワンピにしようと思う。
色は白色で、肩が少し出るタイプとなっている。所謂、オフショルダーというやつだ。
そして、後はその上にコートを着れば完成だ。
でも、コートは出かける直前で大丈夫なので、次は顔を洗い、歯を磨いた。
それが終わったら、髪を梳かして、あとはメイクをして…。
香水は付けない。シャンプーの匂いが好きだと言っていたので、シャンプーの匂いだけで充分だ。
メイクは、基礎化粧しかやらないので、すぐに終わる。
あっという間に支度は終わり、慌てて愁の元へと駆け寄った。
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