私が一番近かったのに…
遊園地にはずっと憧れていた。愁と一緒に行きたいと…。
まさか愁の方から提案してくれるなんて思わなかったので嬉しい。絶対に一緒に行きたい。

「行く!行きたい!計画立てて行こうよ」

もうすっかり気持ちは、次の約束へと持ってかれていた。
気が早いのは分かっていても、逸る気持ちを抑えきれなかった。

「こら。まだこの旅は終わってないんだぞ。
ったく、はしゃぎやがって。幸奈は可愛いな…」

「だって、楽し過ぎて、早く次もあるといいなって、思っちゃったんだもん」

私達が恋人同士ではないことは百も承知だ。
それでも私は、一緒に居たいという自分の気持ちを優先させた。
この気持ちを簡単に曲げることはできなかった。

「それは俺も同じだ。幸奈と一緒に居る時間が大切で。一緒に居て、こんなに楽しい人はなかなかいない」

また泣きそうになった。愁はいつだってそう。大切なことは、ちゃんと言葉にして伝えてくれる。

「私も愁しかいないかも。私達っておにあ…、」

言いかけて言葉に詰まった。マズい。これ以上はダメ。
他にいい言葉。代わりになる言葉…、えっと……。

「私達っておにあ…?」

「私達って、似た者同士だねって言いたかったの。
肝心なところで、噛んじゃって。あはは…」

上手く誤魔化せただろうか。勘の鋭い愁でも、今の状況を察すれば、スルーしてくれるであろう。
どこからどう見ても、あからさまに苦し紛れな言い訳でしかないが…。
もし指摘でもされたら、私は今日、百年の恋が冷めるかもしれない。

「そうだったのか。確かに似た者同士かもな」

どうやら言葉の意味を、ストレートに受け止めてくれたみたいだ。よかった。これで一安心だ…。

「でしょ?所々、似てるもん」

私達が似ているかどうかなんて、本当のところは分かっていない。
それでも、この場を乗り切るための嘘なので、上手く話を合わせるしかなかった。
寧ろ合わせてもらっているといった方が正しい。
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