私が一番近かったのに…
「一緒に居るうちに、似てきたのかもな。或いは元々、似た部分があったのかもしれないけどな」

一緒に居て…という言葉が嬉しかった。愁の口からそんな言葉が聞けるなんて、思ってもみなかった。
それはまるで、私と一緒に居る時間を大切にしてくれているかのように感じた。

「俺はそうやって、幸奈のいいところを真似しようとしているのかもしれないな。気づかないうちにだけど」

不意を突かれた。好きな人に自分にいいところを見つけてもらえて、嬉しかった。

「例えばどんなところ?」

答えてくれないかもしれないと思いながら、僅かな希望を託し、聞いてみた。

「素直なところかな。まっすぐに想いを伝えてくれるところとか、可愛いなって思う」

まさかの直球だった。私のことを素直だと言う愁の方が、よっぽど素直である。
そんな愁にときめいてしまう。だって可愛いなんて言うから。愁のせいだ。

「あとは優しくて気遣いができるところ。
周りに気遣いすぎるところが、たまに心配になるが、そこも含めて俺は素敵だなと思ってる」

愁の顔が真っ赤になっていた。私の方がドキドキしているというのに…。
こうやって、人に素直な思いをぶつけることが恥ずかしいんだ、愁は。

「もう恥ずかしいから、この辺で勘弁してくれ。
俺が真似したいところは、そんな感じです…」

充分、愁の想いは伝わった。愁がそこまで私のことを理解してくれていたことが嬉しかった。
想いが溢れ、涙が出そうになったが、ここはグッと堪えた。

「もう充分、お腹いっぱいです。ありがとう。想いを伝えてくれて」

これ以上は望まない。贅沢なことは言わないから、もっと一緒に居る時間が、長ければいいのに…と、思ってしまう。

「別に構わないけど。そういうお前は?俺が答えたんだから、幸奈も答えてくれるんだよな?」
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