私が一番近かったのに…
まさかそうくるとは思ってもみなかった。絶対に仕返しだ。
畜生。素直に答えてくれる段階でおかしいと、気づいていればよかった。
自分が撒いた種なので、自分で処理することにした。

「私は仕事に対する姿勢が似ているなって思ったかな」

上手く伝えられない。自分の中にある想いを伝えることって、こんなにも難しいのだと知った。

「俺もそこは似てるなって思ってた。
まさか同じことを考えていたとは思わなかった。今、凄く嬉しい」

似た者同士になってきているのか、或いは元々、相性がいいのか。
どちらであっても嬉しい。お互いがお互いを補うために、無意識的にやっていることなのだから。
もしかしたら、どこかで意識的に似せている部分があるのかもしれない。
それでも自分達が気づかないうちに、お互いに似ている部分が多いことは、素直に喜ばしかった。

「私も嬉しいよ。安心するの。愁と似ている部分があることが」

好きな人と思考が似ていることほど、嬉しいことはない。
同じことを同じタイミングで考えているということになるから。
今回はたまたま話の流れ的にそうなったのもあるが、普段からそうなのかと思うと、顔がニヤけそうになった。

「俺も安心する」

安心し合える関係が、理想なのかもしれない。
その理想という枠でずっと、私は留まっているわけだが…。
その先へと進むためには、どうしたらいいのだろうか。この枠にずっと収まっていたくはない。

「帰りたくないな。ずっとここに居たい」

私の方がもっと帰りたくないと願っている。
帰ったらこんなふうに、甘えられなくなってしまう。

「私もまだ帰りたくない…」

人が大勢いる中、キスされた。
唇と唇が触れ合うだけの軽いキスだったが、それだけでも私はドキドキした。

「あまりにも可愛い過ぎるから、ついしたくなった。
普段なら人前でキスなんて絶対にしないが、そんなん言われたら、誰だって我慢できないに決まってる」
< 159 / 346 >

この作品をシェア

pagetop