私が一番近かったのに…
「あぁ。もちろん、ちゃんと送るよ」

愁もニコニコしていた。どうやら早くこの景色を写真に収めたいみたいだ。

「本当に綺麗だよな。写真に撮っても綺麗だ…」

隣で目をキラキラ輝かせながら、写真を撮っている。
私も同じように、景色を撮ってみた。

「すごい綺麗……」

言葉を失うほど、あまりの綺麗さに見蕩れてしまった。
このままずっとこの景色を眺めていたいところだが、せっかくのツーショットが撮れないままになってしまうのは勿体ないので、そろそろ切り上げた。

「ねぇ、愁。そろそろ、二人でも撮らない?」

私から愁に声をかけてみた。
すると景色に夢中になっていた愁が、こちらに顔を向けてくれた。

「そうだな。そろそろ二人でも撮るか。
幸奈、もっと近くに寄ってくれ…」

写真を撮るために、肩と肩が触れ合う距離にまで密着した。
こんなに距離が近いなんて緊張してしまう。ただ写真を撮るだけなのに…。

「幸奈、緊張しすぎだ。もう少しリラックスしろ。ほら、撮るぞ…」

まずは先に、愁のカメラで撮影した。

「よし、いい感じだな」

撮った写真を見せてくれた。景色も自分達も綺麗に写っており、大満足だ。

「私が次に撮るの、すごいプレッシャーだよ…」

愁より上手く撮れる自信がない。
この際、クオリティが低くてもいい。これは記念なのだから。
なんて思っていたら、携帯を取り上げられた。一体、これから何が起きるの?

「俺に任せろ。撮ってやるから」

こうやって引っ張ってくれる姿は、とても頼もしいと思った。

「撮るぞ。はいチーズ…」
< 161 / 346 >

この作品をシェア

pagetop