私が一番近かったのに…


           ◇


扉を開けた瞬間、強引に腕を引っ張られ、中に引きずり込まれた。
掴まれた腕が開放されたかと思いきや、次の瞬間、キスをされた。
いきなり激しいキスだった。ひたすら与えられる甘い快楽に、私は溺れた。

「幸奈、俺の言うことを聞け」

ようやく口が解放されたかと思いきや、いきなり命令口調。
私は素直に愁の指示に従った。

「うん。いいよ」

「それじゃ、今から俺が幸奈の服を脱がせる」

私のタイツに手を伸ばした愁は、いきなりタイツを破き始めた。

「え?どうして…?」

咄嗟のことだったので驚きを隠せず、思わず声が漏れてしまった。
いつもはもっと優しいのに、今日は乱暴だった。
身体が少し震えている。怖い。もっと優しくしてほしい。

「破きたかったから。一度やってみかったんだよ」

そんな理由で破いたの?タイツは消耗品だ。多くあればあるほど助かる。
確か替えはあったはずだ。まさか破かれるなんて、思ってもみなかった。
もう少し考えてから、行動してほしいと思った。

「今日の愁、怖いよ。もう少し優しくしてください」

「ごめん。考えなしに破いちゃって……」

どうやら、ふと我に返った愁は、冷静になった途端、現実に引き戻されたみたいだ。
本当はタイツを破くくらい大丈夫だよと言ってあげたいが、簡単に何でも許してしまえば、どんどんエスカレートしていくかもしれないので、それは避けたかった。
さすがに私も、これ以上はついていけない。ここは少し厳しい態度を取ってみることにした。

「今回は許すけど、次にこういうことをしたら、愁のスマホの中に入っているエッチな動画を全部消すけど、それでもいい?」

最も男性が困ることといったら、他人にエッチな動画を消されることであろう。
この脅しは効果が絶大であろう。だってスマホの中身を見せなくてはならないのだから。とても残酷な話である。
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