私が一番近かったのに…
「それで、その、そろそろ続きを再開してもよろしいですか?」

愁が萎縮している。どうやら破いたことを後悔しているみたいだ。
ちゃんと反省しているみたいだし、今回は特別に許してあげることにした。

「いいよ。しよっか」

私の言葉と共に、行為が再開された。お互いに狂ったように求め合った。
昨日もたくさんしたはずなのに、何回しても飽きない。
すればするほど、もっと欲しくなる。もっと触れ合いたい。交じり合いたい。
身体はとっくに限界なはずなのに、あまりの気持ちよさに、ずっと繋がっていたいと思った。


           ◇


「…行き、まもなく発車致します」

帰りのバスも、相変わらず人で溢れていた。
バスに乗った途端、疲れが一気に襲ってきて。愁は先に眠ってしまった。
私は眠くても寝なかった。まだこの旅行の余韻に浸っていたかった。
だって、帰ったらまたこうやって、一緒に過ごせる時間があるのか分からないから。

「ん……、幸奈……」

肩にもたれ掛かってきた。一瞬、名前を呼ばれたので、目が覚めたのかと思いきや、寝言で私の名前を呼んでいただけみたいだ。

「はぁ…」

一息ついた。ドキッとした。名前を呼ばれるだけで、心臓が爆発しそうだ。
愁はいつも私に、大切な存在だと言ってくれるが、愁の本当の気持ちが分からない。
私の立場で、気持ちを求めてはいけないことは分かってる。
分かっていても、思わせぶりな言葉を投げかけられてしまえば、勝手に期待してしまう。
本当は彼女のこと、もう好きじゃないのかな?とか。別れて私の元へ来て…とか。
そんな淡い夢を見たところで、絶対に後悔するに決まっているので、一応夢は見ないようにしている。
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