私が一番近かったのに…
「先輩、幸奈には手を出さないでくださいね。幸奈は、今まで先輩が遊んできた子達とは違うので」

私を先輩から庇ってくれた。それがすごく嬉しかった。
私は愁に守られてる。そう実感した瞬間、今まで避けてきたのがバカらしく思えた。
意地なんて張らずに、もっと素直になっていればよかったのかもしれない。

「悪かったよ。お先に上がるわ」

先輩が気を利かせて、先に休憩を上がった。
突然、休憩室に愁と二人っきりになってしまった…。

「幸奈、お前は隙だらけだ。気をつけろ。あの先輩はチャラすぎるから」

彼女がいるのに、どうして私の心配なんてしてくれるの?大切な友達だから、守ってくれるの?

「大丈夫だよ。髪に触れようとしただけだし。それ以上でもそれ以下でもないよ」

私の中ではそんな認識だった。
でもどうやら、愁の中では違ったみたいだ。

「それでもダメだ。俺以外に触らせようとするな。
幸奈は、俺以外に触られても平気なのか?」

平気なわけがない。触られたくない。愁だけがいいに決まってる。

「嫌だよ。触って欲しくなんかない」

一切、嘘はつかなかった。正直でいたかった。ここで逃げたら、過去の自分の二の舞いになる。もう二度と同じことは繰り返したくはなかった。

「なら絶対に触らせるな。俺以外の男全員な」
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