私が一番近かったのに…
どうやら、私はまたどこかで選択肢を間違えてしまったみたいだ。
本当のところは、彼女とどうなったのかなんて知らない。
ってきり、大丈夫なんて言うから、勝手に早とちりして、逃げ出してしまい、愁の話を最後までちゃんと聞くことができなかった。
結局、愁を困らせてしまった。今ならまだ間に合うような気がした。
それでも訂正せずに、追いかけようとしないのは、私の心が疲れたと悲鳴をあげているから。
もう追いかけるだけじゃダメだ。愁に追いかけきてほしいと、最後までそんなことを願っていた。

「おい。早く開けろ」

帰り道がいつもよりあっという間に感じた。
もうこれが最後の夜だと思うと寂しかった。

「今、開けるから、ちょっとだけ待ってて…」

ガチャという音と共に、扉が開いた瞬間、愁に無理矢理、中に押された。

「待てねーよ。これが最後なんだぞ?一秒だって無駄にしたくない」

玄関の床に押し倒された。強引に割って入ってくるキス。息をつく暇もなかった。
いつもなら優しい目で見つめてくれるのに、今日は睨みつけられた。
それはまるで自ら最後を告げたくせに、誘うような表情や声を出すなと伝えてきているかのように感じた。

「立て。風呂場へ行くぞ」

また無理矢理、腕を引っ張られ、お風呂場まで強引に連れて来られた。

「待って、愁。服を脱がないと…」

「脱がなくていい。早く来い」

中へ引き摺り込まれ、服を着たままだというのに、シャワーのお湯をかけられた。

「どうすんのよ。服が濡れちゃったじゃない。お気に入りの服なのに…」

「そんなの知るか!濡れたって構わないだろうが」

また無理矢理、キスをしてきた。荒々しいキスを。
それでもやっぱり、愁は私を気持ちよくさせるのが上手だ。
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