私が一番近かったのに…
何も言わずに出ていくのは非常識だと思い、一応、置き手紙は置いてきた。

“愁へ。
理由も言わずに、終わらせようとしてごめんなさい。
本当は愁に言っておきたいことがありました。
愁に初めて気持ちを告げたあの日から、愁のことがずっと好きでした。
しつこい奴だって思ったよね?自分でもそう思います。
私はこの関係を始めてからも、始める前からも、気持ちは変わってません。
ねぇ、愁。これからはちゃんと彼女と上手くやってね。お幸せに。
それと、家の鍵は置いておきます。鍵をかけた後、ポストに投函して置いてください。
今までありがとう。もう二度と会うことはないでしょう。さよなら。
                    幸奈”

好きだと言えなかった自分を何度も憎んだ。そんな自分の今の素直な気持ちがそのまま、手紙に表れていた。
私はどこで間違えてしまったのだろうか。早く気持ちを伝えようとしなかったこと。身体の関係を持ってしまったこと。
今となっては、全部間違えていたと思う。
そもそも、愁のことを好きにならなければ、よかったのかもしれない。
好きになること自体に罪はない。手段を選ばずに、手に入れようとしたことがいけなかった。

ねぇ、愁。あなたは今、私が隣に居ないことをどう思っていますか?
私は寂しいです。もっとあなたの傍に居たかった。
ずっと好きでいてごめんね。あなたは友達としか思っていなかったかもしれないけれど、私はあなたを友達として見れなかった。
最低な友達でしょう?セフレに向いていなかったと思う。
こんなにも苦しいなら、セフレになんてならなければよかった。
今までありがとう。さよなら。もう二度とあなたには関わらないので、安心してください。

電車に揺られながら、一人泣いていた。脇目も気にせずに…。
失恋ってこんなにも苦しいものだと、改めて思い知った。
呆気なかったな、私の恋は。結局、彼女には勝てなかったことを思い知った。
恋をして、たくさん後悔をした。それでも自分の気持ちが折れずに、真っ直ぐに好きでい続けられたことは奇跡だったと思う。
恋とは時に人を強くし、脆くさせるもの。私はこの一年弱で、多くを学んだ。
大丈夫。私はきっと新しい恋に踏み出せる。愁なんかよりも、もっと良い男を捕まえてみせるんだから。

こうして、私の初恋は幕を閉じたのであった…。
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