私が一番近かったのに…
え……?今、何て言った?愁が彼女と別れた…?
もしかして、あの時、愁が怒っていたのは、私が愁の話をちゃんと聞かずに、無理矢理関係を終わらせようとしたからってこと?!
どうしてちゃんと最後まで話を聞かなかったのだろうか。もし、あの時、ちゃんと話を聞いていたら、今頃違う未来があったかもしれないのに。

「愁は今でも変わらずに、大平さんのことをずっと想い続けてるよ。
アイツが不器用なことは、もうとっくに知ってるでしょ?アイツから連絡は着てないかもしれないけど、それはただ意地を張ってるだけだから。
ごめん。そろそろ切るね。また連絡するよ」

一方的に通話は途中で切られてしまった。私は愁の気持ちを知らされて、正直戸惑っている。
私はどうしたらいいのだろうか。そもそも愁ってまだ私のことが好きなのかな。
そんな様子、一ミリもこちらに感じさせなかったくせに…。
中山くんの親切心は有難いが、私はもう愁の元へは戻れない。
ようやく前を向いて歩き始めたのだから、もうこんなことを考えるのは止めよう。

あれ?でも待てよ。中山くんの様子から察するに、私と愁の事情を知った上で、愁の気持ちを知らせてくれた。
だとしたら、愁が彼女と別れたのも、私のことを想っているのも、本当ということになる。
益々、分からなくなってしまった。私はどうしたらいいのだろうか。
やっぱり、本人から直接聞かないと、何もかも信じられない。
意地を張ってるわけではなくて、私からお別れを告げたのにも関わらず、こちらから会いにいく勇気が出ないだけだ。
何であんなことをしてしまったのだろうかと、今更になって後悔し始めている。
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