私が一番近かったのに…
「条件…って何?先に言っておくけど、あまり高い物は買えないよ」

「…はぁ。お前は一体、俺を何だと思っているんだ?物を買わせるわけがないだろう。
それに、そんな難しいことをお前に要求したりなんかしない」

確かに言われてみればそうだ。となると、条件とは一体、何なのだろうか。
途端に緊張してきた…。次にどんな言葉がくるのか、まだ心の準備ができていない。
私にできることだと分かっていても、それでも不安になってしまうのは、きっと自分に自信が持てないせいなのかもしれない。
もう一度、やり直すチャンスを頂いた。次こそ失敗なんてできない。もう二度とあなたを失いたくないから。

「それじゃ、どんな条件なの…?」

怖い…。でも知りたい。愁、早く教えてよ。

「まずは俺の話をちゃんと最後まで聞いてほしい。
今から話したいことがあるんだが、時間は大丈夫か?」

まだ話したいことがあるみたいだ。一体、どんな話をするのだろうか。
私はその話を聞いてどう思うのか、全く想像できなかった。

「大丈夫。時間ならいくらでもあるから。それで、場所はどこにするの?」

今ならまだお店もやっている時間帯だ。だからといって、お店で話せるような内容ではない。
となるとこの流れはやっぱり、家しかない。今、部屋が綺麗かどうか不安になってきた…。
この際、そんなことを気にしたって仕方がない。今、大事なのは、愁とちゃんと話をすることだ。

「俺ん家に来ないか?よくよく考えてみたら、今まで俺ん家に幸奈を呼んだことってなかったから」

今までは彼女に見つからないようにするために、万が一のことも踏まえて、なるべく愁の家に行くことをお互いに避けていた。
やっと愁のお家へ行ける…。嬉しい気持ちと同時に、今は複雑な気持ちが入り交じっていた。
今からどんな話をするのか、不安な気持ちの方が大きかった。
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