私が一番近かったのに…
でも、大平さんは違う。今まで俺が出会ってきた女達のような、そんな女じゃない。純粋で穢れを知らない、綺麗な存在(ひと)だ。
だから俺は、大平さんの前だと妙に緊張してしまい、宝物をどう扱ったらいいのか分からない状態に陥ってしまう。
ここで一緒に帰ることができれば、連絡も取りやすくなり、遊びにも誘いやすくなる。
お願いだ…。大平さん、俺と一緒に帰ってくれ……っ!

「えっと…、その、夜道は暗くて怖いので、岩城くんさえよければ、お願いします」

やった…!大平さんが俺と一緒に帰ってくれることになった。この時、俺は完全に舞い上がっていた。
好きな女の子とようやく二人っきりになれる。こんなに嬉しいことはない。
それに、他の奴らを出し抜くことができた。さぞ悔しがっているであろう。
ざまーみろ。お前らがモタモタしている間に、俺が勝ち取ってやったぞ。

「それじゃ岩城くん、お願いね。僕は遠い子達を送って行かないといけないから」

「はい。お疲れ様でした。お先に失礼します」

こうして、大平さんと一緒に帰ることができた。
そして、ここからが俺達の本当の物語の始まりであった…。


          ーENDー
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