私が一番近かったのに…
逆に男を煽っているということに気づいてほしい。

『もう……。愁の意地悪!』

男なんて好きな子に対しては、意地悪な生き物だ。
もっと好きな子に構ってほしいから、意地悪してしまう。

『ごめん。つい可愛くて虐めたくなっちゃった』

『いいよ。そんなところが大好きだから。
ねぇ、愁。お願い……』

彼女も我慢できなくなり、恥ずかしそうに懇願する。
俺はそんな彼女を目の当たりにし、抑えが効かなくなり、彼女を抱くことにした。

『いいよ。優しく抱いてあげる』

彼女は初めてなのに、手加減なんてできなかった。

『もう一回したい。…ダメ?』

また君は俺を困らせるかのように、上目遣いで俺を見つめる。
こんなお願いなら、幾らだって叶えてあげる。いつでもオッケーしたいくらいだ。

『いいよ。もう一回しよっか?』

そして、夜が空けるまで何度も求め合った…。

「って俺、気持ち悪…っ!」

自分の妄想に自分で引いてしまった…。
もし、これを幸奈に知られたら確実に嫌われる。もちろん、言うつもりはない。俺の中だけに留めておくつもりだ。
そして、妄想が捗っていたこともあり、気がついたら果てていた。

「はぁ。俺、初デートで襲ったりしないかな」

先行きが不安な岩城 愁であった…。
まさか彼女になるよりも先に、あの純粋なお嬢様と、セフレになる未来が待ち受けているとは、この時の俺は想像すらしていなかった。


          ─END─
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