私が一番近かったのに…
今、私が言った好きは、完全にビターチョコのことではなく、店員さんへの想いが溢れ出てしまった好きだ。

「今日はビターチョコの在庫が多めなので、買い時ですよ。
…って、すみません。勝手に買わせる形になってしまって」

いつもの私なら、このアイスは少し高く感じてしまうが、今の私にとってはこんなの大した値段には感じなかった。
お兄さんと仲良くなるためなら、値段は厭わなかった。

「大丈夫です。気にしないでください。わざわざオススメまで教えて頂き、ありがとうございました。
またこのお店に来るので、その時もオススメがあったら教えてくださいね」

これ以上、長引かせる作戦を決行するのは止めた。
ここまで良くしてくれた人に、本当はあなたと仲良くなるためだけに声をかけたなんて気づかせたくなかった。

「俺でよければ是非。またのお越しをお待ちしております」

それからずっとあのイケメン店員さんのことが忘れられなくて、彼のことばかり考えていた。


           ◇


気がついたら、あのコンビニに通いつめる日々を過ごしていた。
どう足掻いても、ただの店員と客という関係の枠からはみ出せずにいた。
いっそのこと、あのコンビニでアルバイトでもしようかと思った。そうすれば、彼とお近付きになれる。
アルバイトの募集をしていないか、スマホで検索をかけてみたところ、既に募集は終了していた。
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