私が一番近かったのに…
あの人はイケメンなのだから、彼女がいないはずがない。
どうして、私は顔だけで選んでしまったのだろうか。
私に優しくしてくれたのも、客だからに過ぎない。
優しくされて、勝手に勘違いをして、運命だと感じてしまうなんて、私はとんだ自惚れ屋だ。
もし客ではなくて、同僚だったら、あんなふうに優しくしてくれなかったかもしれない。
もう二度とあのコンビニへは行かないと決めた。
たまたま入ったコンビニに、好みのイケメンがいたということにして、私は彼のことを忘れることにした…。


           ◇


忘れると決めたのに、懲りずにまたあのコンビニへ足を運んでしまった。
やっぱり、まだ彼のことを忘れられなかった。
まだはっきり付き合っていると決まったわけじゃない。
それに、彼が一方的に彼女のことを好きなだけの可能性もあるので、その場合は付け入る隙が充分にある。

好きな人に好きな人がいる場合、諦めなくちゃいけないことにはならない。
もし、付き合っていたとしたら、その場合はもちろん、私はちゃんと諦める。
人のものに手を出すなんてことは、したくはないから。
でももし、付き合っていなかったとしたら、彼を振り向かせたい。あの人に勝ちたい。何をしてでも…。

もう手段なんて選んでいる余裕すらなかった。
胡座をかいている彼女を脅せたかった。
せいぜい今のうちに、彼との時間を楽しんでおいてください。そのうち私が彼の隣を奪いにいくので。
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